ベンチプレスのやり方と効果をわかりやすく解説!応用メニューや継続のコツも紹介
筋トレの代表格として名高いベンチプレス。ジムでバーベルを胸の上で上下させる光景を見たことがある方は多いでしょう。しかし「難しそう」「怪我が怖い」といった理由で敬遠している人も少なくありません。
実際のところ、ベンチプレスは正しいフォームで行えば初心者でも安全に取り組める優秀なトレーニングです。上半身の複数の筋肉を同時に鍛えられるため、効率的な筋力アップやボディメイクが期待できます。
この記事では、ベンチプレスがもたらす具体的な効果から正しいやり方、自宅でもできる応用メニュー、そして継続するコツまでを初心者向けに分かりやすく解説。男性も女性も、それぞれが求める理想の身体づくりにベンチプレスを活用する方法をお伝えしていきます。
ベンチプレスで得られる効果
ベンチプレスを継続することで得られる効果は多岐にわたります。主な効果として以下の3つが挙げられます。
・上半身の主要筋肉の発達 ・姿勢改善と基礎代謝向上
・日常動作やスポーツパフォーマンスの向上
上半身の主要筋肉が鍛えられる
ベンチプレスでは、胸・肩・腕の主要な筋肉が同時に鍛えられます。
**大胸筋(胸の筋肉)**が主なターゲットとなり、この筋肉が発達することで男性なら厚みのある胸板が手に入ります。胸の中央に縦の線が入るようになり、Tシャツやスーツを着た時のシルエットが格段に良くなるのが特徴です。
女性の場合は、胸周りの筋肉が鍛えられることでバストの土台がしっかりし、バストアップ効果が期待できます。また、デコルテライン(鎖骨周辺)が美しく整うため、首元の空いた服装がより映えるようになるでしょう。
さらに**上腕三頭筋(二の腕の裏側)**も同時に鍛えられるため、二の腕のたるみ解消にも効果的。特に女性が気になる「振袖肉」と呼ばれるたるみの改善に大きく貢献します。
**三角筋前部(肩の前側)**の強化により、肩幅が広がって逆三角形のシルエットが作りやすくなることも大きなメリットの一つです。
姿勢や基礎代謝アップ
ベンチプレスの効果は見た目の変化だけにとどまりません。
胸周りの筋肉が発達すると、胸郭(胸の骨格)が自然と開きやすくなります。これにより胸が張りやすくなり、肩が後ろに引かれる正しい姿勢を保ちやすくなるのです。現代人に多い猫背の改善に大きく貢献するでしょう。
筋肉量の増加は基礎代謝の向上にも直結します。基礎代謝とは、何もしていない状態でも生命維持のために消費されるエネルギーのこと。筋肉は安静時でもエネルギーを消費する組織のため、筋肉が増えれば自然と消費カロリーも増加。結果として「太りにくく痩せやすい身体」が手に入ります。
特に大胸筋は身体の中でも大きな筋肉の一つ。ここを鍛えることで効率的に基礎代謝を上げることが可能です。ダイエット中の方にとって、筋トレは食事制限と並んで重要な要素といえるでしょう。
姿勢の改善と代謝の向上により、見た目にも嬉しい変化が現れます。背筋が伸びることでお腹周りがスッキリ見え、全身のラインにメリハリが生まれるのです。
パフォーマンス向上に
日常生活やスポーツにおけるパフォーマンス向上も見逃せない効果の一つ。
ベンチプレスで鍛えられる筋肉群は「押す」動作に関わる筋肉です。重いドアを開ける、高い場所に物を置く、階段で手すりを押すといった日常動作が楽になります。
スポーツ面では、バスケットボールのシュート、バレーボールのアタック、テニスのサーブなど、腕を前方に押し出す動作が必要な競技でのパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
また、ベンチプレスを継続することで骨密度の向上も期待されます。筋肉が骨を引っ張る力が強くなると、骨もそれに応じて強度を増すため。特に女性や中高年の方にとって、将来の骨粗鬆症予防にも役立つ重要な要素です。
まず知るべきベンチプレスの正しいフォーム
ベンチプレスは見た目以上に奥が深い種目。正しいフォームを身につけることで効果を最大化し、同時に怪我のリスクを最小限に抑えることができます。
基本的なフォームは以下の4つの要素から構成されています。
・手幅とグリップの適切な設定 ・肩甲骨と背中のポジション調整 ・バーの軌道をコントロールする技術 ・足の踏ん張りと呼吸法の習得
手幅とグリップの位置決め
バーの握り方は、ベンチプレスの効果と安全性を左右する重要なポイントです。
基本の手幅は肩幅の約1.5倍が目安となります。この幅で握ることで、大胸筋に均等に負荷がかかり、肩関節への負担も軽減されるためです。手幅を極端に狭くすると上腕三頭筋への負荷が増え、逆に広すぎると肩を痛めるリスクが高まります。
手首の角度も重要な要素。手首を真っ直ぐにするのではなく、やや外側に向けて「八の字」を作るように握ると安定性が向上します。この角度により、手首への負担が分散され、より安全にトレーニングできるでしょう。
グリップに関しては、サムアラウンドグリップ(親指をバーに巻きつける握り方)を強く推奨します。サムレスグリップ(親指を外す握り方)は、バーが滑り落ちる危険性があるため初心者は避けるべき。親指でしっかりとバーを包み込むことで、安全性が格段に向上します。
手幅による効果の違いも理解しておきましょう。標準より狭く握る「ナローグリップ」では大胸筋の内側と上腕三頭筋に、広く握る「ワイドグリップ」では大胸筋の外側により強い刺激が入ります。
肩甲骨と背中をセットする
上半身の安定性を確保するためには、肩甲骨と背中の正しいセットアップが不可欠。
まず肩甲骨を寄せて下げる動作から始めます。両方の肩甲骨を背中の中心に向けて引き寄せ、同時に下方向にも引き下げることで、胸が自然と張った状態になるのです。この姿勢により、肩が前に出るのを防ぎ、大胸筋により効果的に負荷をかけることができます。
背中には軽いアーチ(ブリッジ)を作ります。ただし、腰を無理に反らせる必要はありません。自然な背骨のカーブを維持しながら、胸郭を少し持ち上げる程度で十分。このアーチにより肩甲骨の固定が強化され、より安定したフォームが実現されます。
頭・両肩・お尻の3点は常にベンチにしっかりと接触させることが重要。特にお尻が浮いてしまうと腰への負担が増加し、怪我のリスクが高まります。これらの接点を意識することで、全身が安定したプラットフォームとなり、力を効率的にバーに伝えることが可能になるでしょう。
正しく筋肉に聞かせるバーの軌道
バーを下ろす位置と挙げる軌道は、ベンチプレスの効果を決定する重要な要素です。
バーを下ろす位置はみぞおちの少し上が基本。この位置に下ろすことで、前腕(肘から手首まで)が地面に対して垂直になり、肩や肘への負担が最小限に抑えられます。鎖骨付近や腹部に下ろしてしまうと、関節に無理な角度がかかり怪我の原因となりかねません。
肘の角度は体側から約45度に保ちましょう。脇を完全に開いて90度にしてしまうと、肩関節に過度なストレスがかかります。逆に肘を体側に密着させすぎると、上腕三頭筋への負荷が強くなり、大胸筋への刺激が減少してしまうでしょう。
バーを挙げる際の軌道にも注意が必要。真上に持ち上げるのではなく、わずかに弧を描くように肩関節の真上に向けて押し上げます。この軌道により、筋肉の動きに沿った自然な動作が実現され、より効率的な筋力発揮が可能になるのです。
足の踏ん張りと呼吸法も意識する
下半身の安定と適切な呼吸法は、上半身のトレーニングであるベンチプレスでも重要な役割を果たします。
レッグドライブと呼ばれる足の使い方をマスターしましょう。両足を床にしっかりと設置し、つま先はやや外向きに。膝は90度程度に曲げ、足裏全体で床を押すように力を入れます。この踏ん張りにより全身が安定し、上半身により多くの力を集中させることができるでしょう。
呼吸法では腹圧の保持が重要なポイント。バーを下ろす前に大きく息を吸い込み、お腹に空気を溜めて腹圧を高めます。この状態を挙上中も維持することで、体幹が安定し腰痛の予防にもつながるのです。
初心者の方は安全を優先し、以下の呼吸パターンから始めることをおすすめします。バーを下ろす際に息を吸い、挙げる際に息を吐く基本的なリズム。慣れてきたら、より高重量に対応できる腹圧保持の技術を段階的に取り入れていきましょう。
息を止めすぎると血圧が急上昇する危険性があるため、特に高血圧の方や心疾患をお持ちの方は、医師に相談してから取り組むことが大切です。
ベンチプレスの重量と回数の決め方
ベンチプレスの効果を最大化するためには、目的に応じた適切な重量と回数の設定が欠かせません。闇雲に重いものを持ち上げようとするのではなく、自分の現在のレベルや目標に合わせた戦略的なアプローチが重要です。
重量と回数の設定で考慮すべき要素は以下の通り。
・初心者はフォーム習得を最優先とした軽めの設定 ・筋力向上や筋肥大など目的別の回数・重量設定 ・ダイエットや体力維持目的での高回数アプローチ ・パートナーとの合同トレーニング時の工夫 ・適切なセット間休憩の取り方 ・1RM(最大挙上重量)の測定と活用方法
初心者の決め方
ベンチプレスを始めたばかりの方は、重量よりもフォームの習得を最優先に考えましょう。
目安となる重量は**体重の50~70%**程度。体重60kgの方であれば30~42kg、70kgの方なら35~49kgから始めるのが適切です。「軽すぎるのでは?」と感じるかもしれませんが、正しいフォームを身につけるためには十分な負荷といえるでしょう。
進歩の順序はフォーム→重量→回数の3段階で考えることが大切。まずは軽い重量で正しい動作を反復練習し、フォームが安定してから徐々に重量を増加。最終的に目標とする回数をこなせるようになったら、次のレベルへステップアップします。
初心者の方におすすめの具体的なプログラムは、8~12回を1セットとして3セット行う方法。この回数範囲であれば筋肥大効果も期待でき、同時にフォームの定着も図れます。10回3セットが楽にできるようになったら、2.5kg程度の重量アップを検討しましょう。
無理は禁物。1セット目で12回できても、2セット目で急激に回数が落ちるようであれば、まだ重量を上げるタイミングではありません。
筋力アップや筋肥大を目指す場合
明確な目標がある中級者以上の方は、目的に応じてトレーニング変数を調整することが重要です。
筋力向上を目指す場合は1~6回の低回数高重量が効果的。この回数域では神経系の発達が促進され、筋肉が持つ潜在的な力を最大限に引き出すことができます。ただし、高重量を扱うため怪我のリスクも高まるため、十分なウォーミングアップと補助者の確保が必須となるでしょう。
一方、筋肥大を目的とする場合は6~12回の中回数中重量が最適。この回数域では筋繊維に適度なダメージを与えつつ、修復・成長に必要な代謝的ストレスも十分に蓄積されます。見た目の変化を求める方には、この回数域でのトレーニングを推奨します。
重量設定の目安として、筋力向上なら1~6回で限界を迎える重量(85~100%1RM)、筋肥大なら6~12回で限界を迎える重量(70~85%1RM)を選択することが大切です。
ダイエットや体力維持の場合
減量や健康維持を主目的とする場合は、15回以上の高回数軽重量アプローチが適しています。
高回数でのベンチプレスは、筋持久力の向上と同時に代謝促進効果も期待できるためです。軽めの重量で多くの回数を反復することで、筋肉の毛細血管密度が向上し、脂肪燃焼能力も高まります。
セット間の休憩を短く設定(30~60秒)することで、より高い代謝促進効果が得られるでしょう。短い休憩により心拍数が高い状態を維持でき、有酸素運動に近い効果も期待できます。
具体的には、15~25回を3~5セット行い、セット間は1分以内の休憩に設定。この方法により、筋力維持と脂肪燃焼の両方を効率的に行うことが可能です。
合トレの場合
パートナーと一緒にトレーニングする際は、単独では難しい高強度なトレーニングが可能になります。
スポッター(補助者)がいることの最大のメリットは、安全に限界付近まで挑戦できること。一人では「バーが上がらなくなったらどうしよう」という不安から、本来の力を出し切れない場合が多いのです。信頼できる補助者がいれば、この心理的な壁を取り払うことができるでしょう。
補助の際の合図は事前に決めておくことが重要。一般的には「きつくなったら『助けて』と声をかける」「バーの動きが止まったら補助に入る」などのルールを設定します。呼吸のタイミングも合わせ、挙上者が息を吐くタイミングで補助者も力を加えるとスムーズです。
合同トレーニングには心理的効果も大きく、競争意識やモチベーションの向上が期待できます。「パートナーに負けたくない」という気持ちが、普段以上の力を引き出してくれることも少なくありません。
セット間の休憩は1~3分程度
セット間の休憩時間は、目的に応じて調整することが重要です。
筋肥大を狙う場合は60~90秒の比較的短い休憩が効果的。この時間設定により、筋肉中の代謝物質が完全に除去される前に次のセットに入ることで、成長ホルモンの分泌が促進されます。
一方、筋力向上を目指す場合は2~3分のより長い休憩が必要。神経系の回復には時間がかかるため、十分な休憩を取ることで各セットでのパフォーマンスを維持できるでしょう。
休憩時間中は完全に動きを止めるのではなく、軽いストレッチや深呼吸を行うことをおすすめします。特に胸や肩周りの軽いストレッチは、次のセットでの可動域確保に役立つはず。歩き回る程度の軽い有酸素運動も血流を促進し、疲労物質の除去を助けてくれます。
1RMの把握で効率的な成長も
1RM(最大挙上重量)の測定は、トレーニング計画を立てる上で非常に有用な指標となります。
安全な測定方法として、実際に1回だけ挙げるのではなく、RM換算表を活用することを推奨。例えば80kgで5回挙げられる場合、換算表によると1RMは約90kgと推定されます。この方法であれば怪我のリスクを抑えつつ、現在の筋力レベルを把握することが可能です。
定期的な1RM測定により、成長を数値で可視化できることも大きなメリット。「3か月前は80kgだったのが、今は85kgまで上がった」という具体的な進歩が確認できれば、モチベーションの維持にもつながるでしょう。
ただし、実際に1RMに挑戦する場合は安全対策が不可欠。十分なウォーミングアップ、信頼できるスポッターの確保、セーフティバーの設置など、万全の準備を整えてから臨むことが大切です。
ベンチプレスの効果を伸ばす応用メニュー
基本のフラットベンチプレスに慣れてきたら、より多角的に胸筋を刺激する応用メニューに挑戦してみましょう。角度や器具を変えることで、通常のベンチプレスでは鍛えにくい部位にもアプローチできます。
主な応用メニューは以下の通り。
・インクラインベンチプレス(大胸筋上部の集中強化) ・デクラインベンチプレス(大胸筋下部のターゲット) ・ダンベルベンチプレス(可動域拡大と左右バランス調整) ・グリップ幅の変更(ナローグリップ・ワイドグリップ) ・フロアプレス(自宅環境での代替案) ・スミスマシンベンチプレス(安全性重視のアプローチ)
インクラインベンチプレス(大胸筋上部の集中強化)
インクラインベンチプレスは、ベンチの背もたれを30~45度に起こした状態で行うバリエーションです。
この角度により、**大胸筋の上部(鎖骨部)**により強い刺激を与えることができます。通常のフラットベンチプレスでは下部から中部にかけての刺激が中心となるため、上部を集中的に鍛えたい場合に非常に効果的でしょう。
フォームのポイントとして、バーを下ろす位置が通常より高くなることに注意が必要。鎖骨付近を目安に下ろし、肘の角度は体側から約45度を保ちます。角度がつくことで肩関節への負荷が増加するため、フラットベンチプレスより軽めの重量から始めることが大切です。
インクラインベンチプレスで上部胸筋が発達すると、正面から見た時の胸の厚みが増し、よりたくましい印象を与えることができます。特に男性にとっては、Tシャツを着た時のシルエットが格段に向上するでしょう。
デクラインベンチプレス(大胸筋下部のターゲット)
デクラインベンチプレスは、ベンチの頭側を下げ、足側を高くした角度で行う種目です。
この体勢により**大胸筋の下部(肋骨部)**に集中的な刺激を与えることが可能。大胸筋下部の発達により、胸筋全体の輪郭がより明確になり、メリハリのある胸部が完成します。
デクラインの角度は15~30度程度が適切。あまり急角度にしすぎると血液が頭部に集中し、めまいや不快感の原因となる場合があるため注意が必要です。バーを下ろす位置はみぞおちよりやや下を目安とし、挙上時は真上ではなく肩関節方向に押し上げることを意識しましょう。
体勢が不安定になりやすいため、足をしっかりと固定できるベンチの使用が推奨されます。初心者の方は、まずフラットとインクラインに慣れてからデクラインに挑戦することをおすすめします。
ダンベルベンチプレス(可動域拡大と左右バランス調整)
ダンベルを使用したベンチプレスは、バーベルでは得られない独特の効果をもたらします。
最大の特徴は可動域の拡大。バーベルの場合、バーが胸に触れた時点で動作が止まりますが、ダンベルなら胸の位置より深く下ろすことが可能です。この深いストレッチにより、筋繊維により強い刺激を与えることができるでしょう。
また、左右の手が独立して動くため、筋力差の改善にも効果的。多くの人は利き腕の方が強く、バーベルでは強い側が弱い側を補ってしまうことがあります。ダンベルなら左右均等に鍛えることができ、バランスの良い筋発達が期待できます。
フォーム面では、ダンベル同士をぶつけないよう注意しながら、バーベルと同様の軌道を意識します。重量設定は、バーベルベンチプレスの重量を2で割った数値を片手分の目安として始めると良いでしょう。例えば、バーベルで60kg挙がる方なら、片手30kgのダンベルから開始するのが適切です。
グリップ幅の変更(ナローグリップ・ワイドグリップ)
手幅を変更することで、刺激を受ける筋肉の部位を調整できます。
ナローグリップベンチプレスでは、手幅を肩幅程度まで狭くすることで上腕三頭筋への刺激が増加。同時に大胸筋の内側部分にも強い負荷がかかるため、胸の中央部分の発達に効果的です。二の腕の引き締めを目指す方には特におすすめといえるでしょう。
一方、ワイドグリップベンチプレスでは手幅を通常より広く取ることで、大胸筋の外側により強い刺激が入ります。胸の横幅を広げたい場合に有効ですが、肩関節への負担が増加するため、痛みを感じない範囲で行うことが重要です。
どちらのバリエーションも通常のベンチプレスより軽めの重量で行い、フォームの習得を優先させましょう。
フロアプレス(自宅環境での代替案)
ベンチがない環境でも胸筋を鍛えられるのがフロアプレス。床に仰向けになり、ダンベルやバーベルを使って行います。
可動域はベンチプレスより狭くなりますが、肩関節への負担が軽減されるというメリットがあります。肘が床に触れることで動作の最下点が決まるため、肩の柔軟性に不安がある方でも安全に取り組めるでしょう。
自宅トレーニングでは、ダンベルを使ったフロアプレスが現実的。重量の調整もしやすく、場所も選びません。ただし、床の硬さによっては肘を痛める場合があるため、ヨガマットなどを敷いて行うことをおすすめします。
スミスマシンベンチプレス(安全性重視のアプローチ)
スミスマシンは軌道が固定されたベンチプレス専用器具で、安全性が高いことが最大の特徴です。
バーが決められた軌道上でしか動かないため、バランスを崩す心配がなく、一人でも高重量に挑戦しやすくなります。セーフティフックも簡単に設定できるため、補助者がいない状況でも安心してトレーニングできるでしょう。
ただし、軌道が固定されているため、安定筋群の発達は期待できません。フリーウェイトで鍛えられる細かい筋肉群の強化には不向きのため、基本はフリーウェイトで行い、スミスマシンは補助的な使用にとどめることをおすすめします。
初心者の方がフォームを覚える際や、怪我明けのリハビリ段階では非常に有用な器具といえるでしょう。
ベンチプレスをやる際に気を付けるべき点
ベンチプレスは高い効果が期待できる反面、重量物を扱うため安全面への配慮が不可欠です。怪我を防ぎ、継続的にトレーニングを行うために、以下の注意点を必ず守りましょう。
フォームの安定を最優先する
・正しいフォームなくして安全なし 基本姿勢(肩甲骨を寄せる、胸を張る、足を踏ん張る)が崩れた状態では、関節や筋肉に不適切な負荷がかかります。重量を追求する前に、鏡でのフォームチェックや動画撮影による客観的な確認を定期的に実施してください。
・疲労によるフォーム悪化に注意 セットが進むにつれて疲労が蓄積し、無意識にフォームが乱れがちです。「あと1回」という気持ちが働いても、フォームが維持できない場合は潔くセットを終了することが重要。
・左右のバランスを常に意識 片側に偏った動きは関節の故障につながります。バーが水平に保たれているか、左右の肘の角度が同じかなどを毎回確認する習慣をつけましょう。
ウォームアップと準備運動を徹底する
・関節の可動域確保から始める 肩関節、肘関節、手首の動的ストレッチを入念に実施。特に肩甲骨周りの柔軟性は、正しいフォーム維持に直結します。腕回し、肩甲骨の寄せ離しなどを10~15回程度行いましょう。
・段階的な重量アップでウォーミングアップ いきなりメイン重量を扱うのは危険です。バーのみ(20kg)から始まり、メイン重量の50%、70%、85%程度で段階的に体を慣らしていくことが大切。各段階で5~8回程度の軽い挙上を行います。
・全身の血流促進も忘れずに 軽い有酸素運動(5~10分程度の歩行やエアロバイク)で体温を上げ、筋肉への血流を促進させることで怪我のリスクを大幅に軽減できます。
補助者とセーフティバーの活用
・一人で行う場合は必ずセーフティバー設置 胸の高さより少し下にセーフティバーを設定し、バーが落下しても胸や首を圧迫しないよう調整します。「面倒だから」「軽い重量だから」という理由でセーフティを省略してはいけません。
・補助者がいる場合の事前打ち合わせ 「どのタイミングで補助に入るか」「合図の方法」「挙上経路」などを事前に明確にしておきます。補助者も集中してトレーニング者の動作を見守る必要があり、携帯電話を見るなどの行為は厳禁です。
・補助者の技術レベルも考慮 経験の浅い補助者の場合、かえって危険を招く場合があります。適切な補助技術を持つ人に依頼するか、一人で行う際はより慎重な重量設定を心がけましょう。
無理な重量設定は避ける
・見栄より安全性を優先 周りの人が挙げている重量に惑わされず、自分の現在の筋力レベルに適した重量を選択します。急激な重量アップは関節や腱への負担が大きく、慢性的な痛みの原因となることがあります。
・体調不良時は重量を下げる 睡眠不足、体調不良、ストレス過多の状態では普段の力を発揮できません。そのような日は重量を下げるか、トレーニング自体を休む勇気も必要です。
・定期的な重量見直し 筋力の向上に伴い適正重量も変化します。月に1回程度、現在の筋力レベルに対して重量設定が適切かを見直しましょう。逆に、しばらくトレーニングから離れていた場合は、以前の重量より軽めから再開することが大切です。
・限界への挑戦は慎重に 新記録への挑戦は、体調が万全で、信頼できる補助者がいる環境でのみ行います。一人で限界重量に挑戦することは絶対に避けてください。
・痛みを感じたら即座に中止 「少しくらいの痛みなら大丈夫」という考えは非常に危険です。関節や筋肉に違和感を覚えたら、その日のトレーニングは中止し、必要に応じて医療機関での診察を受けましょう。
その他の重要な注意点
・器具の点検を怠らない プレートがしっかり固定されているか、バーにひび割れはないか、ベンチの安定性に問題はないかなど、使用前の点検を習慣化しましょう。
・適切な服装と靴の着用 滑りやすいウェアや不安定な靴は、フォームの乱れや転倒の原因となります。動きやすく、足裏がしっかりと床をグリップできる靴を着用してください。
・水分補給とトレーニング時間の管理 脱水状態では集中力が低下し、事故のリスクが高まります。適度な水分補給を心がけ、長時間の連続トレーニングは避けましょう。
ベンチプレスを継続させるコツ
ベンチプレスは筋トレの王道種目でありながら、継続が難しい種目でもあります。重量物を扱う不安や効果が見えにくい初期段階で挫折してしまう方も少なくありません。しかし、適切なアプローチと工夫により、ベンチプレスを生活の一部として定着させることが可能です。
継続のために重要なポイントは以下の通り。
・無理のない自分に適したメニュー設定 ・成長を実感できる記録管理 ・モチベーション維持のための仲間づくり
自分に合ったメニューから始める
継続の最大の敵は「無理をしすぎること」です。最初から高い目標を設定しすぎると、達成できない自分に失望し、トレーニング自体を嫌いになってしまう可能性があります。
現在の体力レベルを正確に把握することから始めましょう。腕立て伏せが10回未満しかできない方が、いきなりバーベルベンチプレスに挑戦するのは現実的ではありません。まずは腕立て伏せや軽いダンベルから段階的にステップアップしていく方が確実です。
週の頻度も無理のない範囲で設定することが大切。毎日やろうとするより、週2回を確実に継続する方が結果的に長続きします。月曜日と木曜日など、具体的な曜日を決めてスケジュールに組み込んでしまうのも効果的な方法でしょう。
小さな目標を積み重ねることで達成感を味わいやすくなります。「半年で100kg挙げる」という大きな目標より、「今月は40kgで8回3セット」「来月は42.5kgに挑戦」といった短期目標の方が現実的で達成しやすいはず。
環境面でも自分に合った選択を心がけましょう。人が多いジムが苦手なら早朝や深夜の時間帯を利用したり、どうしても通えない場合は自宅でのダンベルトレーニングから始めたりと、続けやすい環境を整えることが重要です。
トレーニングの記録を付ける
記録をつけることで、目に見えない成長を数値として実感できるようになります。これは継続のモチベーション維持において非常に強力な手段です。
記録すべき項目は、日付・重量・回数・セット数・体調・気づいたことなど。スマートフォンのメモアプリやトレーニング専用アプリを活用すれば、いつでも簡単に記録できます。手書きのノートでも構いません。
記録をつけることで進歩の可視化が可能になります。「先月は35kgで8回だったのが、今月は40kgで8回できた」という具体的な成長が確認できれば、次へのやる気にもつながるでしょう。
また、記録は停滞期の分析にも役立ちます。重量が伸び悩んでいる時期に過去の記録を振り返ると、「この時期は睡眠不足が続いていた」「食事量が少なかった」などの原因が見えてくる場合があります。
写真での記録も併用すると効果的。月に1回程度、同じ角度・同じ服装で体の写真を撮影しておけば、体型の変化を客観視できます。数値だけでは分からない見た目の変化が確認できれば、さらなる動機づけとなるはずです。
グラフ化することで視覚的に成長を実感できるのもメリット。扱える重量の推移をグラフにプロットすれば、右肩上がりの成長曲線が描けて達成感を味わえるでしょう。
合トレを行う
一人でのトレーニングは孤独感や緊張感の欠如から、継続が難しくなる場合があります。仲間と一緒に取り組むことで、楽しさと責任感の両方を得ることができます。
身近な人への声かけから始めてみましょう。家族、友人、同僚など、健康意識の高い人や体を鍛えることに関心がありそうな人にトレーニングパートナーとなってもらうよう相談してみてください。一緒に始める仲間がいれば、「今日はサボりたい」という気持ちになった時でも、相手への責任感が背中を押してくれます。
フィットネス系アプリの活用も現代的で効果的な方法。多くのアプリでは同じ目標を持つユーザー同士がつながれる機能があり、オンライン上でトレーニング記録を共有したり、励まし合ったりできます。直接会わなくても、バーチャルな仲間の存在が継続の支えとなるでしょう。
ジムでの自然な交流も期待できます。同じ時間帯に通い続けていると、自然と顔見知りになる常連の方々がいるはず。挨拶から始まって、時にはフォームのアドバイスをもらったり、補助をお願いしたりする関係性が築ければ、ジムに通うのが楽しみになります。
競争要素も適度に取り入れると効果的。「今月は友人より5kg多く挙げる」といった健全な競争心は、普段以上の力を引き出してくれることがあります。ただし、相手を貶めるような競争は避け、お互いの成長を喜び合える関係性を大切にしましょう。
SNSでの発信という形での「仲間づくり」もあります。自分のトレーニング記録や成果をSNSで共有することで、同じ趣味を持つ人々とつながったり、応援してもらえたりします。人に見られているという意識が、サボり防止にも役立つはずです。
合トレ仲間を見つけるなら「トレマッチ」
ベンチプレスを継続するために最も重要な要素の一つが、一緒にトレーニングできる仲間の存在です。しかし「周りに筋トレ仲間がいない」「ジムで声をかけるのは勇気がいる」という方も多いのではないでしょうか。
そんな時に活用したいのが、トレーニング仲間専用マッチングサービス「トレマッチ」です。住んでいる地域やトレーニング目標、利用するジムなどの条件を設定するだけで、同じ志を持つトレーニングパートナーを簡単に見つけることができます。
事前にメッセージのやり取りができるため、初対面でも安心してトレーニングに集中できるのが特徴。ベンチプレスの補助をお願いしたい時や、新しい種目に挑戦したい時に頼れる仲間が見つかります。一人では続かなかったトレーニングも、信頼できるパートナーがいれば継続しやすくなるでしょう。